前回: タイ、ドンムアンの臭い
(2019/10/06追記)この記事は、今までと異なり終始「だである調」を用いています。直すのが面倒なので、これも弱小ブロガーの試行錯誤の跡として残しておきます。ご了承ください。
2日目ドンムアン⇨カオサンロード【23km】

ドンムアン空港からカオサンロードまでは50バーツのA4バスで行くことに決めていた。理由は単純明快、安いから。これより重い理屈はない。
23km...意外と遠い。正直空港から歩いて、あるいはタクシーで50バーツくらいで行けると思っていた。初一人旅というのも関係していると思うが(あるいは頭の悪さ)、日本とタイの距離を考えれば空港からカオサンロードなんて家から最寄り駅程度のもの。そう思っていた。
頭の悪さ加減が露呈したのは、この「最寄り駅程度」の”程度”という言葉を全く無視していたことだ。実際、空港からカオサンロードまではせいぜい3,4kmだと思っていた。そりゃあそうだろう。なんせカオサンロードはバックパッカーの聖地であるから、まさか空港から20キロ、30キロ離れているわけがない。もしそうなら”バックパッカー”の高潔さが失われてしまうではないか。
「え〜、なんかバックパッカーって自分の足でどこまでも歩いていくってイメージだったのに、バスとかタクシーとか電車とか、科学文明フル活用するとかありえないんですけど~」
なんて声が聞こえてきそうである。バックパッカーというとやはり下のような画像を思い浮かべる人がいるかと思います。


これこそバックパッカーである。自分の足を大地につけ、一歩一歩歩んでいく。その高潔な姿こそが!
大嘘である。
いや、自転車で世界一周とかはなんかかっこいいし、自分の足でペダルを漕いでるから全く問題はないのだが、基本は移動しているときは科学文明につかりっきりである。バックパッカーは、ただ”キャリーバッグではなく、バックパックで旅をする人”程度の捉え方で良いだろう。
さて、そんなわけでA4バスに乗り込んだ。まあ20kmを歩いていく人はそういないだろう。バス車内の様子は欧米人旅行客:アジア人=3:4くらいであった。一人旅は自分以外誰もいないようだ。
この頃から、もしかしたら一人旅をする人は思った以上にいないのではないかと思うようになってきた。これは冗談ではなく、タイに来る前までは本気で全旅行者のうち3割くらいは一人だと思っていた。
そんな訳がない。
殆どは2人以上の分子状態を形成している。原子は思ってた以上になかなか見当たらない。特に意表を突かれたのが、欧米人が思った以上にグループを形成していることである。なんか欧米人の方が単独で行動するイメージがあったのだが...つくづく”イメージ”はあてにならないものだと思った。
バスが走り始めた。高速道に乗り、80〜100km/hくらいのスピードでスムーズに進んでいたのだが、急にバス車内で2,000hz程度のサイン波のような音が流れ始めた。これが神経に障る。この音が流れ始めて5分くらい経つと、運転手が高速道の脇にバスを停め、バスから降りて後ろの方へ歩いて行った。タイヤか何かに不具合でも見つかったのだろうか...
しかし、結構長い間戻ってこない。7、8分経ったのちに一度戻ってきたがまたすぐにバスを降りて行った。痺れを切らした欧米人旅行客の一人が”Hey!”と運転手に声をかけるも、運転手ガン無視。その後10分ほど経ったのち、戻ってきて何事もなかったかのように出発。その後15分ほど2000hzのサイン波を発し続けながら走ると、民主記念塔が見えてきた。もうすぐ着くだろう。
だが、僕はカオサンロードで降りなかった。いや、降りられなかったのだ。
民主記念塔を過ぎると、バスが所々停車し始め、客が降り始めた。停留所が近づくと、運転席近くにすわていたおばさんが、タイ語で大声で喚き始めるのだが、勿論何を言っているのかはさっぱり。
民主記念塔を過ぎて2つ目ほどの停留所でまたおばさんが何か喚き散らすと、欧米人旅行客の半分くらいはそこで降りて行った。え、お前らタイ語分かるの??
「なるほど、ここがカオサンロードかもしれない。いや、でもネットで見た感じと少し違うぞ?もう少し先かな...でも欧米人旅行客はたくさん降りて行ってるし...」
なんてことを考えているうちに、次の停留所についた。ここで欧米人はほぼ全員降りて行ったが、明らかにカオサンロードではなかった。やはり前の停留所がカオサンだったのだ。
しかし、僕はここで、なぜか降りなかった。
理由は分からない。でも降りなかった。これは次の停留所で降りるしかない。
そして降りた。道路のど真ん中で。
Wifiやsimを契約していないためネットは使えず、今どこにいるのかも分からない。しかし、単純明快な解決法がある。それは、バスが来た道を戻ること。
実はこうなることを見据えていて、民主記念塔を過ぎたあたりからバスのルートを記憶してい他のだ。
ああ、これは頭の良いことをした。などとずっと自惚れているのも悪くはないが、一刻も早く昼飯を食べたかった。もう時刻は12:30を回っていた。
バスの来た道を戻ろうとした。しかし、戻れなかった。なかったのだ、歩道が。
絶望に打ちひしがれつつも、なんとか車道を通り、聖地へ辿り着こうとした。
無理だった。
30分ほどの格闘の末、仕方なしにメータータクシーを捕まえ、カオサンロードへ向かった。旅は、何も予定通りにはいかないものだ。