"Your favorite books you haven't read yet"の第一弾は"Outliers: The Story of Success"です。
天才は成功するのだろうか? 成功する人にはどのような特徴があるのか? を普段とは違った角度で鋭く分析していきましょう。
Outliers: The Story of Success
英語版
>> Outliers: The Story of Success
日本語版
>> 天才!成功する人々の法則
成功する人を分析する手法
普段私たちは個人の成功を語るとき、その人自身の努力の過程や行った行動に焦点を当てて話しがちです。この本はそれとは別に、その人が属する文化や身の回りの人間関係、環境などに着目しながら「成功する人々の条件」を考察していきます。
それでは、実際著者のMalcom Gladwellはどのような視点から成功する人々の法則性を導いたのか解説していきたいと思います。
成功する人はいかにして成功したか

Now then! Take the talent from him and give it to the one with ten.
誕生月の僅かな差がその後の人生に決定的な差をもたらすなどと言われたら私たちは辟易してしまうでしょう。しかし、著者のMalcom Gladwellはカナダのホッケーチームを例にとり、誕生月の僅かな差が将来もたらす大きな違いについて着目します。
カナダでは同じ年齢の少年を集めてクラスを作るとき、年齢の区切りを「一月一日」に設定していました。10歳、11歳くらいの思春期の少年達にとって、1月初めに生まれた少年と、その年の12月終わりに生まれた少年とでは身体の発達に大きな差があります。
カナダではホッケーのオールスターのメンバーを少年達がわずか9歳から10歳の期間で選抜を始めます。もちろん選ぶ側としては、身体が大きく、器用な少年を選ぶ傾向にあります。
選ばれた選手達には「好機(Oppotunity)」が与えられます。指導の質は通常の選手よりも良く、周りには同じように強いチームメイトがわんさかおり、経験する試合数は通常の選手の約3倍になります。
通常の3倍もの試合経験を積めば、選手達が優秀になるのは目に見えています。優れた環境のおかげて優秀になった生徒達はやがて本当に優れた選手となり、上位のチームへどんどんステップアップしていきます。
「才能あり」とみなされた選手にはより多くの好機を与えられ、「才能なし」とされた選手達は彼らとどんどん差をつけられる一方です。まさに、"Now then! Take the talent from him and give it to the one with ten." (持っている人はさらに与えられて豊かになるが、そうでない人は持っているものまでも取り上げられる)
しかし、この才能「あり」と「なし」の差は最初は単なる「生まれた月」という些細な違いでした。その小さな差異がプロになれるか否かを大きく決定づけていたのです。
実際、カナダのホッケーの選抜選手のおおよそ40%が一月から三月に生まれたのです。
この環境の違いは至る国のあらゆる面で同じことが言えるでしょう。例えば日本においては高学歴な学生の親は高学歴高年収な割合が高く、低学歴低収入の親の元に生まれた子供はなかなか這い上がることができません。
高学歴高収入の親はやはり教育の重要性(「学校」教育とは限らないですが)を理解しており、自分の子供により良い教育を施す傾向にある一方、低学歴低収入の親の元に生まれた子供は金銭的、あるいは親の意識的な問題で良い教育を受けることができる可能性が相対的に低くなります。
そうすると、大半の場合は高学歴高収入の親の元に生まれた子供は高学歴高収入に、低学歴低収入にの親の元に生まれた子供は低学歴低収入になってしまう現実が浮かび上がってくるのではないでしょうか。このような「持つものはさらに恵まれ、持たざる者は持っているものまで取り上げられる」現象を教育の再生産と言います。
ここまでが事実確認ですが、このカナダのアイスホッケーの事例以外にも
- ビルゲイツやThe Beatlesはいかに成功したか
- 高IQを持つ天才児はなぜ成功できなかったか
- 最強の弁護士はいかにして生まれたか
- 貧しい街にできた秀才学校
など様々なトピックを扱っています。そして、それらの結論は非常に簡潔明瞭で分かりやすいものばかりです。あの有名な一万時間の法則についても詳しく述べられています。
是非、本書を読んで「成功する人はどのような環境にいたのだろうか」ということについて新しい視点を取り入れてみてください。環境と言っても様々で、今回のアイスホッケーのような「誕生月」であったり、生まれた年と地域であったり、一つの事柄に打ち込んだ時間とそれを取り巻く周囲であったり様々です。
それらはきっと「自分が成功するためにはどうすれば良いのだろうか。何を考え、どんな行動をすれば良いのか」という問いの大きなヒントになるでしょう。
是非読んで見てください^^
Outliers: The Story of Success
最後に

著者のMalcom Gladwellはイギリス生まれで現在はニューヨークに住んでいるジャーナリスト、講演者です。
彼はこの本以外にも5冊ほど本を出版しており、その殆どがヒットしています。TEDで講演もしているので是非見てください。英語の良い勉強にもなります。
非常に聞き取りやすい英語です。主張も本と同様明快で分かりやすいです。上の動画は"David and Gliath"、"The advantages of disadvantages"と"The disadvantages of advantages"などについて述べた文章です。
こちらも本として出版されているので是非読んで見てはいかがでしょうか。